高度救命救急センターの看護師が活用していた、【胸痛】トリアージ!

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【胸痛患者へのトリアージ】

 「胸痛」で来院した患者と聞いたら、どんな緊急度の病態を想起しますか。
ケースや専門書でよく目にする症例は、急性心筋梗塞(AMI)が典型的で、自家用車で来院しトリアージした患者が急性大動脈解離であったなど、シビアなケースを経験してきました。
もちろん、胸痛において、最悪の病態をできるかぎり見逃さないことがトリアージの主軸であるため、学びの場面では、最悪のケースを想定して、緊急性を判断することがトリアージの基本だと思います。
 胸痛を主訴とする患者のうち、急性心筋梗塞の頻度は10~20%程度である事実はトリアージにおける重要なポイントである。さらに、急性大動脈解離、肺血栓塞栓症、緊張性気胸など他の致死的疾患の頻度はさらに低い。つまり、大部分は、非器質的な緊急性の低い疾患である。
 例えば、「昨晩から胸が痛く、息切れもする」という訴えで来院した男性が、単なる心臓神経症であったり、「胸部の真ん中が痛い、心臓に問題が、、、」と訴える患者が胃食道逆流症(GERD)であることもある。(緊急性は低い)

胸痛において見逃してはならない疾患

5Killer chest pain

  • 急性冠症候群
  • 急性大動脈解離
  • 肺血栓塞栓症
  • 緊張性気胸
  • 突発性食道破裂

※東京都では、CCUネットワークがある:患者を迅速に救急搬送し、専門施設に入院させるためのネットワーク

見逃してはならない疾患の特徴

①急性冠症候群(ACS)

  • ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞、不安定狭心症に分類される。
  • 長時間続く胸痛(>30分)、息切れ、悪心、左右の腕や肩、歯、頸部への放散痛、発汗を伴う。
  • 心原性ショック、心室性不整脈を合併する可能性がある。
  • 激しい胸痛は、心筋の危機が進行中であることを意味する。
  • “時は心筋なり!”早期の病変冠動脈枝の再灌流を急ぐこと!

②急性大動脈解離

  • ほとんどの患者が50~70歳
  • 危険因子は、高血圧症、マルファン症候群、妊娠などがある。
  • スタンフォードA型では、上行性の解離が上行大動脈から弓部に及ぶが、スタンフォードB型では及ばない。
  • 左右の上肢間に血圧の差や、脈拍の消失がみられる。
  • 心電図は、大動脈起始部の解離に伴う冠動脈の血流障害がないかぎり、印象的な心電図変化はない。
  • 解離による疼痛は急激に進行する!(虚血性心疾患の疼痛は数分かけて最大になる)

③肺血栓塞栓症

  • 不動状態、骨盤部の外傷や手術後などに多くみられる。
  • 突然発症する呼吸困難と不安、胸膜性胸痛、血痰を伴う咳嗽などが特徴である。
  • 頻脈、頻呼吸がよくみられる。
  • 約半数の患者に下肢の深部静脈血栓症(DVT)を認める。
  • 特徴的な症状がなく、疑う目がなければ見抜けない!リスクがどの程度あるかをアセスメントする!

④緊張性気胸

  • 気胸の一種であり、患側の胸腔内圧が以上に上昇している状態。(私が初めて初期診療の対応をした患者様が緊張性気胸でした)
  • 患側肺虚脱、健側への縦隔偏位、静脈還流障害による心拍出量低下などをきたしている状態。
  • 強い呼吸困難に加え、患側の胸郭運動障害や呼吸音の消失、打診上の鼓音、頸静脈怒張などの身体的所見が特徴。
  • 気胸を発症すること背景として、若年やせ型男性、肺気腫、外傷などがある。
  • 20歳代の患者が突然の胸痛や背部痛が出現した場合、最も頻度が高いのは気胸である。
  • 自然気胸の場合は、多くは患側の肩痛を訴えるのが特徴である。
  • 緊張性気胸は一刻を争う緊急性の高い病態!特徴的な身体所見を見逃さない!

⑤突発性食道破裂(ブールハーベ症候群)

  • 食道内圧の急激な上昇により正常の食道が破裂する。
  • 飲酒後の嘔吐が原因の75%を占め、大量および急速な食物摂取歴が原因となる。
  • 嘔吐後の突然の胸部あるいは腹部痛、嚥下痛、呼吸困難を認める。
  • 所見は、ショック、発熱、著明な全身毒性、縦郭気腫、皮下気腫、胸水貯留など。
  • 食道内圧上昇のエピソードと嚥下や飲水に症状の悪化の有無を確認する。

おわり

以上です。
本来はこの後に臨床推論ができればより知識が深まると思います。
では、次の投稿を楽しみにお待ちください。

1)福井次矢,奈良信雄編,内科診断学.東京:医学書院;2016

2)Collins RD著.金城紀与史,金城光代,尾原晴雄,他訳.コリンズのVINDICATE鑑別診断法.

3)Simel DL,RennieD編,竹本毅訳.JAMA版倫理的診察の技術~エビデンスに基づく診断のノウハウ.東京:日経BP社;2010

4)柴田寿彦翻.マクギ―の身体診断学原著第2版.東京:診断と治療社;2012

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