【痛み】のtipsは3つ!

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①網羅的な問診

 救急外来には、「痛み」を主訴とする患者がたくさん訪れる。体に生じるすべての「痛み」が、体の不具合もしくは異常を示す危険信号であり、その原因となる臓器は、心臓や胃腸、皮膚、筋肉、骨など多岐にわたる。また「肩が痛い」と訴えでも、心筋梗塞のことがある。患者が訴える疼痛部位と原因となる臓器が異なる場合もあるため、「痛み」に対する推論は難しい。
 しかし、この「痛み」を攻略し、緊急性を見極めるtipsがある。「痛み」に対する問診は、LQQTSFAやOPQRSTを用いることが有効である。漏れなく痛みについての情報が聞き出せる。

②”Onset(オンセット)”の確認

 痛みを訴える患者に対して、緊急度を見極める「キー」となるのが、「オンセット」の確認である。
突然は発症する「サドン・オンセット:sudden onset」は、破れる!詰まる!捻じれる!裂ける!といった超緊急の疾患に絞り込むことが可能となるため、痛みを訴える患者に対してsudden onsetか否かは必須の確認事項である。

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原因疾患名
破れる大動脈瘤破裂、消化管穿孔、突発性食道破裂
詰まる急性心筋梗塞、脳梗塞、肺血栓塞栓症、尿管結石
捻じれる精巣捻転、卵巣捻転、S上結腸捻転
裂ける大動脈解離、椎骨脳底動脈解離

 経験上、トリアージナースは「いつから痛くなりましたか?」という発症時間・時期の確認についての質問は必ず実施しているが、オンセットの確認ができてない傾向がある。「痛み」の緊急性を見極めるために、必ずオンセットを確認する習慣を身につける必要がある。
 では、sudden onsetの確認をどのように質問すればいいのか。
「突然痛くなりましたか?」、「急に痛くなりましたか?」と質問をすれば、患者は「はい」、「突然です」、「急にです」と答える。しかし、トリアージナースと患者では発症様式に関する認識のずれが存在し、患者にとっては「昨日から」であっても突然なこと、急なことだと認識することが多い。そのため、これらの質問の仕方ではsudden onsetかどうかは見抜けない。
 オンセットの確認は、必ず発症からの痛みがピークとなるまでの時間が確認できる質問をする。

【問診例】
<Sudden onset(突然発症)>

「まったく痛くなかったのが、ある瞬間から突然どーんと痛みのピークがきましたか?」

<Acute onset(急性発症)>
「なんかおかしい、なんか痛いと感じているうちに、どんどん痛みが強くなってきて、何分間後かには痛みがピークになるような感じでしたか?」

 また、痛みが発症した時間を覚えているか、そのとき何をしていたかを確認する。この質問に対し、明確に時間を答えたり(○時〇分)、何をしていたか(例:友達と電話していた等)と答える場合は、sudden onsetの可能性が高くなる。通常、sudden onsetの場合は症状が強く、患者の不安も強いため、発症から比較的短時間で来院することが多い。
 発症様式に関する質問に対して患者が、「昨日から」、「一週間くらい前から」などと、日単位以上(日、週、月、年単位)で答える場合は、グラジュアリーオンセット(gradually onset:緩徐な発症)であることが多い。gradually onsetでは、患者の発症時の記憶が明確ではなく、ある程度の期間を経て来院することが多く、超緊急の疾患は否定的となる。

③体性痛・内臓痛・関連痛

【1】体性痛

 体性痛には、表在痛深部痛の2種類がある。表在痛とは、皮膚の痛みのことであり、局在が明らかである。トリアージの場面において、緊急性の高い疾患が隠れていることは少ない。
 深部痛は、筋や骨などに生じる鈍痛であり、局在は不明慮である。側壁腹膜や腸間膜、横隔膜などの痛痛は、この「体性痛」に分類され、鋭い痛みで局在が明らかである。
 特に「腹痛」において体性痛と内臓痛の分別は重要な意味を持つ。体性痛の存在は、急性腹症において緊急性の高さを示唆する「腹膜炎」の存在を意味するためである。

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部位局在性振動で増悪
内臓痛消化管、尿管
体性痛腹膜、胸膜

【2】内臓痛

 内臓痛は、管腔臓器の内圧上昇や、実質臓器の被膜の伸展などにより引き起こされる疼痛である。胸腔・腹腔の内臓痛は、交感神経系求心性線維や副交感神経系求心線維(迷走神経)の自律神経や、それに並走する線維で中枢神経に伝えられる。このように自律神経と並走しているため、内臓痛には自律神経系との相互作用が起こりやすく、自律神経症状(冷汗、悪心嘔吐)が伴うことが多い。つまり、痛みを訴える患者に、冷汗や悪心嘔吐が伴う場合、その痛みは内臓痛である可能性が高くなる。
 また、同じ臓器からの痛覚経路が複数存在し、複数の脊髄レベルに達するため、「内臓痛」は痛みの局在も、痛みの性質も不明慮なことが多い。「内臓痛」の場合、握りこぶしや手のひらで示したり、手を動かして範囲を示すなど、漠然とした範囲を示すことが多い。

【3】関連痛

 本来の痛みの発生部位とは異なる場所で感じる痛みを「関連痛」という。「内臓痛」を伝える交感神経求心性線維(1次ニューロン)が投射する2次ニューロンに、皮膚からの体性求心性線維(1次ニューロン)が合流することがある。そのため、内臓からの痛みを皮膚からの痛みと脳が誤認識することがある。これが「関連痛」のメカニズムである。つまり、主に関連痛は内臓痛に由来する(筋骨格系の体性痛にも関連痛が生じることがある。)
 また、関連痛の主な部位を知ることで、疼痛が出現した部位からある程度病気を推定することも可能である。

おわり

以上です。
では、次の投稿を楽しみにお待ちください。

笹木晋,岡田優基,鎌田一宏,他.徳田安春企画.レアだけど重要な「痛み」の原因-システム1診断学.総合診療25:1005,2015

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